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『ダーティ・サリー』 マイケル・サイモン著 感想
ダーティ・サリー ダーティ・サリー
マイケル サイモン (2006/08)
文藝春秋

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“おれ”ダン・レリスは交通事故と思われるリックの事件現場に行き、女性の死体を見つける。
彼女は首と四肢を切断されていた。
刑事達は彼女に“ダーティ・サリー”と名づける。
ダンが捜査を始めた矢先に、市の権力者達に“サリー”の身体の一部が届けられた。
サリーの身元を確かめることもなかなか進まず、捜査は難航する。
一方、リックの交通事故死を否定するリックの友人・アーロンに、ダンは相談されるが・・・。

捜査を進める内に知っていく街の暗い部分。
ダークな警察小説。


いきなり登場する殺害シーン、遺棄されたサリーの遺体の壮絶さ、腐敗している警察内部など、導入部分から“ダークな警察小説”の雰囲気たっぷりです。
ですが、この小説は暴力的なものだけを描いているのではありません。
正直言って、読んでいて不快になる描写も所々ありますが、舞台になっている街・オースティンの汚さ、暗さに触れるダンの怒りや哀しみがきちんと書かれていると思います。

ダンは父親はユダヤ人、母親はWASPですが、半分でも血が入っていればユダヤ人であると思い、また周囲からもそう扱われます。
家庭環境からくるものだと思いますが、感情の抑制がきかず、非常に激しやすく、怒ると暴力的(言葉を含む)になります。
父親がボクサーだった影響でダン自身もボクシングの覚えがあるので、その面ではタフです。
しかし精神面ではけっしてそうとは言い切れません。
実父を精神面で喪失しています。
また警察に入ってからダンを導いた相棒ジョーイにあるべき姿の父を見ていたと思われますが、物語当初から彼も失っています。
この二つの喪失が物語の中で色濃く影を落します。
またダンとは無関係でありますが、もう一人、別の形で父親が顔を出しているので、この物語は“父親”を書いたものでもあるのでしょう。

次から次へと人が殺されていき、あがくようにダンは事件を追います。
腐敗した警察のなかにあって、ダンにはそれでも最期のボーダーラインを超えないんだとこだわります、そのダンに私は魅かれます。

物語の最初はサリーの殺害のシーンですが、その中に写真の思い出が出てきます。
ラストで繋がるエピソードがあって、それがこの物語の事件の悲しさを一層深くします。

怒りの中であがき続け、悲しみに浸されながらも、しかしラストは一片の光明だと私は思いたいです。

ダン・レリスはシリーズ化の予定で、オースティン暗部の年代記になるとのこと。
次の作品を読みたいです。
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テーマ : 海外小説・翻訳本
ジャンル : 小説・文学

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